[ ロケハン その1 ]
昨年の5月に佐々部監督から「もしかしたらやるかも?」と言われていた横山秀夫原作、山田洋次脚本、映画『出口のない海』の呼び出しが私にきた。
7月4日、アメリカの独立記念日に東銀座の松竹本社12階にてプロデューサー諸氏に会う。その会議の中で、この映画の撮影条件は10月20日にクランクイン、12月10日クランクアップ、主演は市川海老蔵さんを予定していますとプロデューサー氏に告げられる。会議の席上、この映画の内容で撮影準備期間3か月の短期間では美術としては撮影に間にあわせられないと悲観的に発言したのを覚えています。
映画の総予算もまだ決まってなくて、肝心の光海軍工廠の回天秘密基地の候補地すら何も決まっていない。どうしようかと考えてもしょうがないと思いつつ、まずは佐々部監督と吉崎製作担当と3人で、光基地やその他の回天基地が点在した山口県の瀬戸内側から回天基地の下見ロケハンを開始した。
佐々部さんは山口県下関市(彼の故郷)で、すでに3作品の映画を撮っているので、私たちは山口県内のロケにはこだわらず、いやすこし避け気味に、山口宇部空港から海岸線を北上した。瀬戸内は海上輸送の航路として戦後目覚ましい発展をとげ、どこにいってもコンビナートや工場群だらけで、景色はいいのだけど、撮影には適した場所は何処にも無く、また基地の面影すら残っていない。
陸路で行ける島々はすべて走破した。あちこちのビジネスホテルや民宿に泊まりながら広島県の呉市から山陰側の島根県益田市まで移動し、そこから日本海側を南下した。くる日もくる日も海岸線をしらみ潰しに捜したが、なかなかいい場所がない。途方に暮れた。その土地、土地で鎮の社に参拝しながら祈るように捜し歩いた。 |